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【選手インタビュー】 マクドナルド山本恵理選手

2018.03.12
コラム

マクドナルド山本恵理選手 2/22 合宿訪問インタビュー 

日時 :2018年2月22日

聞き手:山村柊介、尾崎惇史、吉田彫子

写真 :尾崎惇史



〇パラパワーリフティングを始められたのはいつからですか?

2000...もう分からなくなってきたな(笑) 2016年の5月です。


〇比較的最近なんですね?

めちゃくちゃ最近です。


〇勝手にもっと長いかと思っておりました(笑)

いえ、そうなんです。思われがちなんですけど意外と1年9か月です。


〇ちなみに始められた時からどれくらい記録は伸びているんですか?

始めて29日目に出た試合で37㎏あげて、今は53㎏です。

16㎏上がってますね。


〇1か月で試合出たってのはすごいですね。フォームやルールが厳しいじゃないですか。

そうそう。それが分からなくて、止めろと言われても何を止めるのかが分かんな

かったんです。で、2試技失敗して、3試技目の時にあげたのが37㎏でした。

本当はたぶん40㎏位挙げられたとも思うんですけどね。


〇始められたきっかけというのはなんですか?

2015年の5月に東京都がやっていたNo Limitチャレンジっていう体験会があって、そこに仕事の関係で視察に行ったのがきっかけです。

ほかのスポーツもいろいろあって、同僚と見ていたんですけど、たまたまパラパワーリフティングがあったときに、うちの上司から「やってみたら?」

って言われて、「絶対上がんないですよ~」とか言いながら、ピッて持ち上げたのが40㎏(笑) あははは。


〇最初から素質があったんじゃないんですか?

いや素質があったというわけでは。。。

最初30㎏上げて、そのあと40㎏上げたときに「やらない?」と言ってくれたのがきっかけです。


〇「やらない?」って言ったのが…

宇城さんです。宇城さんと進さんですね。


〇今度私たちも体験会を企画しているのですが、そういう人が出ればいいなと思っているんです。

出ますよきっと。

いやでもあれからいろんな体験会を見て、あの時40㎏上げたらそりゃ誘うよなって思うのが、女子はほんとに20~30㎏しかあげられなくて、

結構運動してるよっていう人でようやく40㎏上がるくらいなんです。だから今となってはそりゃ誘うわなと思っています。


〇ちなみにそれについて思い当たることは何かあるんですか?

私生まれつき障がいがあるんですけど、9歳からパラを目指して水泳をやってて、高校も水泳しかしてなくて、それこそ朝から晩まで毎日泳いでて、本当に水泳しかやってなかったんですけど、で、怪我して。

その怪我っていうのは、もともと障がいがあることで脚の感覚がないので、プールサイドの熱いコンクリートの上に座ってやけどしちゃって、そこから水泳できなくなっちゃったんですよ。それで水泳を断念せざるを得なくなって。

大学院の時に留学することにして、カナダに。それで留学した初日にパラアイスホッケーに誘われたんです。それをやってみて、カナダの女子代表に選ばれて2年間やってたんですよ。だからそういった手を使ったなんかしらのスポーツをやってきたからってのはあると思います。

ただ私はそんなに運動神経があるほうではないです。だから水泳もパラパワーリフティングも本当に単純な作業じゃないですか。水泳もかくだけ、パラパワーリフティングもあげるだけ、でなぜパラアイスホッケーのほうは代表になっちゃったかというと私はスケートが早かったんです。これも単純な動作が速いって話です。あとディフェンスでの体当たりがうまかったみたいです。小柄なんですけど。


〇そうやって聞くとさっきおっしゃってた運動神経が悪いってのは、そうでもないと思うんですけどどうなんですか?(笑)

いや、運動神経って細かい作業を制御できたりってことだと思うんですけど、

私本当にボール投げさせたらひどいですよ(笑)


〇自分の身一つでできることは強いってことですね?

そうです。自分の範囲内でできることはいけます。


〇納得しました(笑)



〇先ほど生まれつきの障がいということをお伺いしましたがどういうものだったんですか?

生まれたときに背中にこぶがあって、そのこぶの中にもう背中の神経が出てて、二分脊椎(にぶんせきつい)っていうんですけど。そこに神経が出てしまっているので、それを収めないといけない。それが破裂してしまっている人と、カバーがかぶっている人がいるんですけど、私はカバーがかぶっている人だったんですね。それを切って脊椎を中に入れたその後遺症ですね。結構海外では多いんですけど、日本ではあまりいないですね。


〇それで神経だから、現在脚の感覚がないということですね。

そうです。


〇ご自分のパーソナリティ的な強みと弱みってどのように思われますか?

弱みはメンタルが弱い!はははは。メンタルすごい弱いです。凹みやすい!めっちゃ凹みやすい。あと人見知りってのが弱みですね。



〇あれ、そうなんですか?この前少し練習を拝見したときに全然そんな感じはしませんでしたよ。

練習してるときはそりゃ人見知りとかないですよ。スイッチ入ってるから。今も入ってます。


〇よかったです(笑)

あと強みは何でも楽しめるところですね。どんな環境でも楽しめると思う。


〇パラパワーリフティングは今何を楽しんでいらっしゃいますか?

今はね、伸びない自分が楽しいです。今すごい去年からスランプで。その伸びない自分がつらくて、アスリートってそういう時期があると思うんですけど。すごいつらいんですけど、でも次どれだけ伸びるんだろうと思ってワクワクしてるっていうのと、それで試合が5月まではないので今は身体を作る時期で、自分の身体の変化も楽しんでいます。自分にどういう負荷をかけて、どういうトレーニングをしたら、どういう身体に変わっていくか。


〇自分がやるだけ変化していくのが楽しいってことですか?

そうですね。パワーリフティングはすごいですよ。だって数字で見られるから。どれだけ変わったかっていうのが。


〇そこを我慢できるんですね。競技戦績が伸びる前に、身体を作っていくとかスランプとかに耐えられるというのは、アスリートとしてメンタルが強いのかなと思いまして。

ああー。意外とメンタル弱いながらも、なんかこそこそするのが好きなんですよ(笑)

コツコツっていうのかな?(笑) 結構おおざっぱだからコツコツでもないけど。大学院生だったっこともあるから、なんというか大学院生って家でコツコツ勉強しているの好きじゃないですか。論文発表をしたり、発表している場所よりも、自分で論文を読んだり、読んで自分の理論を道筋立てていくっていうほうが面白くて。自分はそういう人間だったんで。それと似たように、試合に出るよりも、トレーニングとかしてて、自分にいろんなものを付けていく方が楽しいですね。だからむしろ試合の日はメンタルが弱くなっているんです。「どうしよう~」みたいな(笑)


〇いろんなものをインプットしていくのがお好きなんですね。

そうですねー大好きです。特に私仕事ではアウトプットの方が多くて、競技からインプットをもらっているので、そういう意味では自分に何かをつける場が競技やトレーニングなので、すごく楽しいです。


〇競技のインプットと仕事のアウトプットって、何かリンクしているところがありますか?

なんだろうなぁ。アスリートで得た経験をそのまま仕事に生かせるというのはあると思いますね。体験談とかを話すこともありますし。例えば講演会とか呼んでいただけることもあるから、そこでもお話しすることができますね。何よりメンタル面が弱いので、練習をしていると、「今日はこれだけ練習したから自分は大丈夫だ」って言った感じで、メンタル面を積み上げられているのはあると思います。修行中です(笑) 修行僧みたいな。あははは。


〇パラパワーリフティングのここが好きっていうポイントは何ですか?

単純に重いものを上げること、だけではないところ。


〇その心は?

技術面ってすごいありますね。うまい人のリフトを見れば見るほど、「綺麗だな」って思える。で、これをみんなに思って欲しいってのはあります。110㎏上げても、310㎏あげても、何よりもラーマン(310㎏リフトの世界記録を持つ、シアマンド・ラーマン選手)はあの310㎏をあれだけ綺麗に上げられるというのが素晴らしいと思ってます。

日本でもそうなんですけど、宇城さんや三浦さんは綺麗に上げるんです。西崎さんもそうなんですけど、みんな綺麗に上がるんですね。「綺麗さ」をぜひ見てほしい。でも「あー今の綺麗だったよなー」って思ってもらう為には、結構見て頂かないといけないかもです。


〇とても分かります。僕も全日本選手権を実際に観戦したときに、最初の方は「え、なんでこれだめなの?」って分からなかったんですけど、1日中試合を見てたら、 なんとなく「あ、今のはダメそうだな」とか「これは成功でしょ!」みたいなのが分かってきた気がします。

それを重ねてくると、それでお酒が飲めるくらいになりますよ(笑) 「あー今のリフトすっごい綺麗だ!」みたいになりますよ!ほんとに。はははは。

それが魅力だと思ってます。


〇そこは今、全然気づかれていないところですよね。

本当そうだと思います。ほんとに無駄がない上げ方をする人は綺麗です。どうやったら?って。自分でやってもならないんですよ。「うにゅー」みたいな(笑)

それってたぶん意識の問題で。試技の中で今自分が何をやっているか。今はバーベルを止めている、今は上げる、というターンのフェーズがちゃんと切り分けられている、ていう必要があるんでしょうね。

なので、「重さよりも、綺麗さ」ですね!

「うにゅー」ってしてても重さ上げる人もいるんですけどね(笑)


〇どういうところを見せれば、それって伝わりますかね?

ちょっと失礼かもしれないけど、画像の比較とかしてみるとかですかね?

それこそ、一人の選手とかの前後とかでもいいと思います。2007年と2018年のこの人のリフトの差、みたいな。なのはいいかもしれないですね。単にほんとに綺麗な人をたくさん見てもらっていくことで、もしかしたら、「あ、これが綺麗な試技なんだ」ってことをみんなに刷り込んでもらえれば、なんて思ってます。

「スパーンッ」って感じのを(笑)おろすのも迫力がありますしね。そこからの「スパーンッ」は一層迫力があります。それこそフィギュアみたいな感じ。フィギュアも飛ぶだけじゃなくて、飛んで綺麗じゃなきゃいけないじゃないですか。だからそれはすごく共感してて。

(フィギュアへの)インタビューで「今日はノーミスでしたか?」なんて聞かれていることがあるじゃないですか?まさしく私たち「ノーミス」じゃないといけないんですよ。だからいつかの浅田真央ちゃんが「今日はノーミスで頑張ります」って言っていたのがすごく身に染みる。「私も今日はノーミスでいこう」みたいな。


〇もうそうなると、山本さんの中では、パラパワーリフティングは「重さより、綺麗さ」というスポーツと定義されているんですね。

重さを追って行っても、重さって逃げていくんですよ。

というのもジョン(パラパワーリフティングのトップクラスコーチ、イギリスのジョン・エイモスコーチ)から言われているのは、「数字ばっかりを追うな」って。でも私、最初は数字ばっかり追っていたんですよ。それこそ前は片方ずつの自分の爪に、自分があげたい重さのバーベル書いてたんですよ。(プレートの)色とかも。で、両手くっつけるとちゃんと、上げたいバーベルが見える、みたいな。でもね、重さを追うと逃げていくんですよ~。


〇深いですね。

そう。それ(重さ)よりもやっぱり楽しくあげるとか。その試技を楽しむってことにフォーカスしたほうが、自分はもっと向いているんじゃないかな?って思い始めて。

全日本はそうだったんですよ。「何が来るんだろう?」みたいな。「何㎏あげなきゃ」という事よりも、持ってみたときに「おー来た来た」みたいなね(笑) 「おーこんな重さか。よし綺麗にあげるぞ。」という感覚でした。そういう一つ一つのフレーズを味わえる大会でした。


〇僕もトレーニングをすることがあって、ベンチプレスをやるんですけど、今の話を伺った上でトレーニングをするとまたやり方も変わってくるんだろうなぁ、と思いました。

そうだと思います。重いものをあげるって基本動作じゃないですか。寝てやるってことはそうあることではないけど、基本動作だから誰でもできる事ではあるんです。でもその誰でもできることを、あんなに綺麗にやってのけるんだって。やっぱりこれは鍛錬の末のものだと思うんですよね。


〇先程、パーソナリティ的な強みと弱みを伺いましたが、競技面での強みと弱みはご自身で何だと思われていますか?

んー弱みは、メンタルの弱さが共通していますね。強み…なんだろうな。これも共通で、何でも楽しめる事だと思います。どんなにつらい時でも楽しいと思ってる。

どんなにつらい練習でも、例えば朝めっちゃ早くて、8時からの練習だとして、私朝全然ダメなんですよ。それで行って、「今日は絶対上がらない。もう51㎏とか絶対上がらない。」と思っても、20㎏のバーあげた瞬間に楽しくなっちゃうんですよ(笑) 「今日も行ける!」とか思って。本当に思うんですよね。自分でもおかしいと思ってるんですけど。楽しいんですよ。


〇のめりこんでますね!

そうなんですよ。でもそうなるって分かってないんですよ、毎回。毎回「うわ、今日は絶対ダメ。無理だ。」なんて思って行っても、重いものあげると楽しくなっちゃう。やる気ってやらないと起こらないって言われたことがあるんですけ、まさしくそうだなって。だからあげるっていう気力は、あげないと起こらない。


〇日本のパラパワーリフティングの競技全体としての課題は何だと思われますか?

ジョンも言っていたんですけど、チームが一つになる事っていうのが今の一つの課題なんじゃないかなと思っています。やっぱりもともと競技人口が少なかったので、それぞれが個人でやっていれば良かったと思うんですけど、少し人が増えてきて。

基本的には個別に自身と向き合う競技なので、やっぱり向き合うってところに集中していくと、全体として集まったときに、チームとしてどう力を発揮して良いか分かっていないような。私も含めてなんですが。それをオールジャパン、チームジャパンとして、パラパワーリフティングをどう伝えていくか、強くしていくかっていうのが今の課題かと思っています。


〇チームとして力を発揮する、というところがスポーツの特性柄ピンと来ていないんですけど、チームになったときにそれは変わるものなんでしょうか?

変わると思います。

例えば、私は宇城さんが誘ってくださらなかったらこの競技をやってなかったじゃないですか。で、そのあとも、「どうしてる?」とか「トレーニングどこ行ってる?」とか「どんなトレーニングをしてる?」とかこういうように気にかけてくれなかったら、私はここまで続いていないと思います。

それにパラリンピックに出られた、パラリンピアンの4人はいろんな人の試技を見ているんです。そういう意味ではかなりフィードバックもくれるし、「こういうところ、こうした方がいいんじゃないか?」っていうディスカッションをいつもしてくれるんですよ。で、それをやってくれることによって、自分の競技にさらに深みが出るかなって。今まで考えていなかったこととか、その人が着目している視点とかも得られるので。

それをみんなに広げていく事によって、例えば「あの子は今こういうところを改善しようとしているんだよね。そしたらこの試合はきっとこうなるはずだよね。」ってみんなで見て、「あ、ちゃんとできてるね。こういうプロセスがあったからこそあがった重量だね」といったことを、みんなで見ることができたらチームとして戦えてるんじゃないかなと思います。


〇選手間の協力とか、ノウハウの継承とか。

そうですね。やってる動作は同じだから。重量は違えど。だからチーム感を持って活かさないと。


〇例えば選手間で議論をするときに、意見が分かれることがあるかと思うんですけど、選手の皆さんは個々人でお考えを持っているんだと思います。そういうときってどうされているんですか?今までこういったことはありましたか?

いや、今まで逆にそういうのがなくって。

私は水泳とパラアイスホッケーをやっていたので、チームっていうところにすごく慣れていて。水泳って本来個人スポーツなんですけど、すごくチームを大切にしているんですね。

だから私がパラパワーリフティングに入ってきて愕然としたのは、一人一人が何かすごく好きなことをやっている、っていう事だったんです。でもそれでもいい、っていうところは私は良さでもあると思っているんです。なので、このまま何かを変えろと言われたら、今私に答えはないんですけど、もしこのチームにもっとチーム力があったら、このチームはもっと強くなるなっていうのは思っています。

例えば、合宿に行ってご飯何食べてるとか、今あの人は減量中だとか。減量ってものすごくつらいんですけど、こういったつらいことも誰かと一緒に苦しんでいるんだって思えれば頑張れると思うんですよね。1人じゃ頑張れないこともきっと。

今回のトレーニングでもそうなんですけど、ダウンセット(トレーニングの終盤に、「バーベルを限界の回数まであげる→重量を落とす→バーベルを限界の回数まで上げる」を繰り返すトレーニング)ってものすごくきついじゃないですか。

あれを毎回トレーニングの時に一人でやってると、心折れそうになるんですけど、今回この合宿とかで見てて「やっぱりあの人もきついんだ」って思うと、帰ってからまた身になるから頑張ろうって思えるんですよ。

「あの強い選手も、あんなに「うーうー」言っている」と。次の日身体動かないって言ってる。そしたら同じなんだなって。


〇2020東京のパラリンピックで、パラパワーリフティングがどうなっていて欲しいか、理想の姿は思い描かれてますか?

あります。まずは会場を一杯にしてほしいっていうのがあって。なのでそれぞれの選手ができることを、それぞれやっていかなきゃなと。

なので2020年に向けて自分の競技力を上げていくのはもちろんのこと、競技力を上げていくには自分がやっている競技のことを知ってもらわないと、というところもあるので、私は仕事も関連したところもかなりあるので、そういった意味では、自分のできる事としてはパラパワーリフティングの魅力とこういう選手がいるんだよっていう事を伝えて、会場を満杯にする一部になれればと思っています。それをみんなで広げていって、でやっぱり一人一人のファンを増やしたいっていうのがすごくあるんですよね。

今日見てても分かったと思うんですけど、それぞれすっごい面白い人たちじゃないですか。バックグラウンドがみんな違うし、ただただ筋肉が好きな人たちってわけでもない。各選手の、なんでパラパワーリフティングをやっているのかっていうバックグラウンドと、このスポーツにのめり込んでいるっていう気持ちを、いろんな人に知ってもらって、それぞれのファンの人が来てくれたら、会場は満杯になると思うんです。

なので、そういうのに興味がないっていう選手は、競技力を上げて、競技力で魅せる、っていうのもありだと思うし、キャラクターとして、外で話すのが好きだよっていう選手は、そういった魅力を伝えていくってこともできる事なんじゃないかなと思います。


〇私たちも、微力ながらその点についてご協力をさせて頂きたいと思っております。

よろしくお願いします!




合宿中にもかかわらず、インタビューにご協力いただきありがとうございました!