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【選手インタビュー】 西崎 哲男 選手

2018.03.12
コラム


西崎 哲男 選手 京都合宿訪問インタビュー 

2018年2月22日

聞き手:山村柊介、尾崎惇史

写真:尾崎惇史


〇まずは基本的なところをお聞かせいただきたいのですがいつからパラパワーリフティングは始められたのですか?


2013年の9月から始めて、約4年半経ちました。



〇パラパワーリフティングを始めたきっかけ・出会いはどのようなものだったんですか?


もともと高校のときにレスリングをしていたのですが、その中でウェイトトレーニングとしてベンチ(プレス)をやっていました。事故で障がいをもって車椅子になったときは、はじめは陸上競技をやっていて、そのトレーニングとしてもベンチプレスがあり、出会いといえばそこになりますね。



〇競技自体の知名度が高くなかった中で競技を見つけられたのは?


陸上でウェイトトレーニングをしていた時に一回だけパラの試合に出たことがあるんですよ。その時に同階級くらいの韓国の選手が140㎏・150㎏くらい上げていたのを見てその時は「すごい競技だな」と思った。なので、一般的にはマイナーだけど僕にとってはそうでもなく身近でした。練習でもやってたので。



〇陸上からなぜそこで転向されたのですか?


陸上はやめてたんです。

もともとは北京を目指して陸上をしていたけど結果が伸びずに行けなかったんです。そのあとロンドンを目指すとは言っていたんだけど、惰性で集中できず…その間に子供が生まれて、子供の成長を見たくて、その時に陸上はやめたんです。それでトレーニングもしなくなって、何もしない時期があって。でもそのあと、ちょうど競技を始めた2013年9月か。2020年の東京オリパラが決まったのを見て「やっぱりでたいな」というのがありました。でも、陸上は8年くらいかな?やってて無理だったし、一から陸上を再開して東京パラに間に合う気がしなかった。練習でやってたウェイトトレーニングは楽しかったこともありそれなら、「楽しいことで目指そう」と。



〇さっき一度パラパワーリフティングの大会に出場されたときに韓国の選手が140㎏とか150㎏を上げているのを目の当たりにしたとおっしゃっていましたが、それに追いつく、追い越すと考えたときにハードルや不安は感じませんでしたか?


始めて出たときってメインの競技としてはやってなくて、”陸上をしながら”というのがどこかにあったので。東京パラを目指してやろうと思ったときは、特に重さはこだわってなくて、出たいという想いのほうが強かったですね。



〇以前加藤選手にインタビューした際に、加藤選手も陸上から転向されたということだったんですけど、何か陸上とパラパワーリフティングに共通点はありますか?


それはないですね(笑) はははは。僕は異常なくらいウェイトをやっていたので。やっぱり陸上で短距離をやってたので、まず瞬発の筋肉を鍛えるためでした。でも僕の場合は、どこか必要以上に楽しんでて、息抜きみたいにやってたかな。



〇パラのアルペンスキーの人もウェイトを楽しんでいる人がいることを聞いたことがあるのですが、やはり楽しいんですか?


当時の僕は陸上が主なので、道具とかタイヤの空気圧とか、それこそ自分で作るグローブがどう作ればタイヤにうまく当たるかとか、いろいろ考えることがある中で、(トレーニングの)ウェイトに関しては単純に「重いものを上げたい」というだけ。その時は細かいルールを守ってやってたわけではないし、単純に重量にこだわって上げたいというところに集中できた、かつ、やればやるだけ上がるってのは楽しかったですね。



〇やればやるだけ結果がついてくる、以外に楽しさはありましたか?


まぁもともと好きだったし、あとは「理想の身体(をつくる)」とか。はははは(笑)そういうところが大きいのかなぁって思います。



〇僕自身もトレーニングをするのですがなかなか身体が大きくならないんです。


いやもうそれは気持ち次第ですよ(笑)



〇競技のモチベーションはどんなところになりますか?


うーん。。。僕は正直強くないので。国際大会に出たときに、正直ライバルとかはいないんですよ。あまりにも差が激しいんで。世界記録は205㎏とか。今あげているものと60㎏とか70㎏とか差がある中で、じゃあトップをライバルといえるかと言われればそうではなくて。じゃあ何が?ってなったときに「前回よりも重い重量を上げたい。1㎏でも2㎏でも上げたい。」っていうところだと思います。なので、誰かと戦うというよりも自分との戦いのほうが大きいですね。



〇自分との戦いとなると、なかなか継続するのも意志が強くないと難しいですよね。


いや、それでも全くの一人というわけではないので。やっぱり周りが気にしてくれていたりするので、モチベーションの維持ができているんだと思います。



〇周りの人が見てくれているというところで、会社の方々が協力してくださっているというのをお聞きしたのですが、それはどのように協力を得た、もしくは、巻き込んだのですか?


実は、僕が動いたわけではないんです。もともとオリンピックアスリートとアスリートを求めている会社を結びつける事業をやってる「アスナビ」というところがあって、そこが2020東京が決まったことで、パラリンピックアスリートにもその事業の幅を広げたんですね。そのときにそこに登録して、マッチングして今の会社にいるんです。もともとアスリートとして採用してもらっているので、条件的には競技中心の生活をさせてもらっていて、本来はそこで、あとは「頑張って」ってなるんですけど。

スポーツ文化事業開発室っていうところに所属しているんですが、そこの室長が、「選手をとるだけじゃなくて、会社でもみんなに理解してもらわないといけない」と。そのためにはまずはルールを分かってもらう。正直はじめは、マイナーな競技なので入ったのは知ってるけど何してるかよく分からなかったと思うんですよ。頑張ってるんだなぁ位だったと思います。

ところが社内イベントを室長が開いてくれて、ルールの説明だとか、その時はリオ前だったのでどうすればリオに出られるかとかを説明してくださいました。そこでみんなの理解を得られて、じゃあもっと応援しなきゃな、ということで競技、僕を理解してくれました。



〇どうすればリオに出られるか、というのは具体的にどんなお話だったんですか?


今のランキングと最終選考の大会までに何キロあげなきゃいけないとかでした。



〇室長の方が割と発信をしてくださったんですね。どんな動機だったんでしょうか?


連盟からの依頼で西日本大会で乃村工藝社が会場設営をすることがあったんです。その試合後前回より記録が落ちていたこともあって現状についてお話しする機会があったんです。その時の僕の話を聞いて「何を甘えてんの?」というのがスタートでした。

僕はあんまりいろんな順位を考えてというよりも、自分がどんだけ伸ばすかとか、周りをあまり見てなかったので。どこまで伸ばすのかとか、どうすればそこまで行けるのか、ということを話す機会があった時に、「考えが甘いんちゃうか?」となって、その時に競技のルールも同時に知ってもらっていったってのがスタートですね。



〇もっと周りと戦わなきゃいけないんじゃないか?っていうところですか?


そうですね。。。それと明確な目標を持つべき、というところでしょうね。



〇そういった競技に対するスタンスを会社側と話されているということがまず素晴らしいと思います。


僕もアスナビに登録して、いろんな条件伝えたときに、乃村工藝社には100%条件飲んでもらっていたので、僕としてはもう返すしかなかったんですよ。それ以上求めてなかったし、それこそ会社に対して「自分を応援してくれ」とかも僕から発信することではないかな、と。あとは結果を残して返すんだなと思ってたんです。

でも室長からしたら、アスリートを雇用して、そのアスリートが何をしているか知らないってのは会社としておかしいんちゃうかということで、情報を発信して、共有するようになりました。

それもあって今はパラ・パワーリフティング連盟(JPPF)へ会社も協賛してくれるし、個人のみならず、パラ・パワーリフティング連盟に対しても応援してくれるようになってますね。



〇西崎選手が考えるパラパワーリフティングの魅力って何ですか?やる側見る側両方に立つとして。


見る側の魅力は…すごいこれって単純な競技じゃないですか。重いものを上げるっていう。でもそれだけじゃない。会場が一体になるというか。トップの選手っていうのは応援者を巻き込むくらいの試技に入る前の雰囲気づくり。そういった一体感が魅力かなと。



〇全くその通りだなと全日本を見たときに思いました。僕も気づいたら選手に対して「いけー!」とか言っていたので(笑)


それで、やる方は。。。なんなんでしょうね?(笑) あはははは。競技をやりだした当時は単純に見えていたんですけど。重いものを上げれればそれで強いっていう。でも実際やってみると、そんな大雑把な競技じゃなくて。多分見てて思ったと思うけど、「なんでこれあかんのだろう?」とか。ていうのは同じような感じなんですよ。

まぁ僕も最近分かるようになってきて。それを分かるためにいろんなことを意識するのは楽しいですね。



〇競技の緻密さに対して自分をアジャストしていく感覚ですか?


んー、自分を分かるようになってきたかな。僕はそういうのが楽しいですね。いろいろ考えることもあるし。筋肉もこれまで動いていなかったとこを意識できるようになったりとか。今まで必要ないと思ってたものが必要と思えるようになってきたということもありますね。



〇競技をするにあたって集中するためにやっていることはありますか?


ふつーのこと(笑)ルーティンを使えってよく言われるんですけど、ルーティンってなると五郎丸選手(ラグビーの)が浮かんできて。「あんな感じのはできへん、無理や」って思ってたんですけど(笑)本当はそうじゃなくて、一個一個確認すること。たとえば座る位置であったり、バーベルを見る位置であったりを確認することでした。それを自然な流れにすることによって、本番でも自然にあげられるようになって。そこがずれたときはうまくいかないですね。



〇失敗してしまったときというのはありますか?


リオでの結果はもちろん最近では(2017年12月開催の)メキシコのときかな。世界選手権のとき。新しい重量を上げようとしたときにやっぱり力んで、肩の力も入って。思いのほかそれは上がったけど、やっぱり精度のところでだめでした。



〇ご自分の中でパーソナリティ的な面の強み、弱みはどのように思われますか?


ある程度柔軟なことは強みですかね。自分を信頼してくれている人に「こうなんじゃない?」って言われたときに、柔軟に対応できるというところは強みかな。はははは(笑)難しいな。なんせリオでの失敗があるのでね。成功してから初めて言えることなのかなって思ってるんですよね。リオに向けていろいろと正しいと思ってやってたけどだめで。だからそこを塗り替えるまでは常に勉強ですね。



〇逆に弱みの方はどうですか?


自分に甘いところ、になりそうになるところ(笑)一人だと甘さが出てしまう。だから今の環境ってすごく良いです。周りに気にしてもらえる人がいるから。



〇ある意味ではおしりをたたかれている感覚ですか?


それも感じるというか、一人だと練習でしんどいなってなった時に、休もうとか思うと思うんですけど、「あ!僕の強みは応援してくれている人が多いっていうことや。これやろう。」って思える。それで弱みも無くせているっていう感じかな。



〇個人スポーツだと、一人でやってきて、自分でここまで築き上げたことに対して誇りを持ってやる人も結構いると思うんです。でも周囲にそういった応援してくれる人がいないと、そのスポーツも盛り上がらない気がします。


そうですね。それこそ僕なんて最初に何かあったわけでもないですし、それこそメダルとるとか。この先の保証もない中で応援してもらっているから、すごくサポートを感じるし応えないとなと思っています。1年とか経って環境に慣れてしまうと当たり前になってしまうんですよね。声出してくれてることも当たり前になったりとか。でもそれに慣れてしまわないように感謝の気持ちは忘れないようにしています。



〇周囲への感謝は大きいということですね。


やっぱり競技を気にしてくれている、ということは大きいですね。そこへの感謝は大きいです。最初は一人で、って思っていたんですけども。車いすになった時も、人に頼らずにいたいから筋トレを始めたし。基本は一人でしたいってのがあったんですけど。でもその中で、損得関係なしに応援してくれているってのが目に見えたときに、ちゃんと応えないとな、って思ったのはありますね。



〇2020年のパラリンピックでの競技の理想を教えてください。


ある程度マイナーではあるけども、ルールを理解して頂いて、会場に足を運んで頂いて、たくさんの人に見て頂ければな、と。やっぱり見れば楽しいと思うし、みんなで一体になる場所であってほしいなと思っています。


合宿中にもかかわらず、インタビューにご協力いただきありがとうございました!