■プロフィール
奥山一輝(おくやま かずき) 1997年6月24日生まれ
所属:サイデン化学株式会社
先天性の二分脊椎症。
男子65Kg級、日本記録保持者
自慢の筋肉は「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」
ここぞという場面でパワー炸裂!今の自分が持つ最大値を出しきるために戦う! 声援が力に!
■深堀り!パワリフ選手紹介 2020
2020年7月オンラインインタビュー実施
◇ インタビュー詳細はこちら:深堀り!奥山一輝 選手.pdf
◇ どんな選手?
パラ・パワーリフティング界、ジュニア選手 第1号として高校2年生から全日本選手権に出場するなど、
活躍を続けている奥山選手。自身は先天性の二分脊椎症で両脚が不自由。
小学6年生で車いすテニスを始めて、小学生時代、国内ランキング15位にランクインしたこともある。
高校は車いすテニスを頑張るために、体育コースがあること、ハードコートがあること、という点で選んだ県立学校に通った。
パラ・パワーリフティングとテニスの両面から今後期待されるアスリートとして、
順天堂大学スポーツ健康科学部 スポーツ科学科に進学。栄養や、人体の構造などについて学んだ。
今年(2020年3月)卒業し、現在は社会人1年目。実は、4人兄弟の一番上のお兄ちゃん。
●座右の銘 【有志竟成】 志を曲げることなく、固い信念を以て事に当れば遂には実現される
三国志が好き。仁義、徳を重んじる人物像がお手本。そのようにまっすぐに生きたいと思う。
自分も選手である前に、人として大事なものを見失わないようにしたい。
●好きな筋肉、自慢の筋肉は?
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
◇パラ・パワーリフティングとの出会い
パラ・パワーリフティングに出会ったのは、車いすテニスに打ち込んでいる最中の高校2年生(2014年)の夏だった。
有名コーチのレッスンを受けるために友人と一緒に参加したテニスのイベント。
レッスンの合間、いろいろなブースが出ている大きなイベントだったので、休憩時間にぶらぶらと回っているところに、
パラ・パワーリフティングの体験コーナーがありベンチプレスをやってみたところ、スカウトされた。
「テニスにプラスになるのならパワーリフティングも取り入れてみよう、という気持ちでパワーリフティングの道へ足を踏み入れた。」
車いすテニス時代(ご本人提供)
スカウトしたのはパラリンピックに複数回出場している日本を代表する有名選手2名、
男子49Kg級の三浦浩選手と、80Kg級の宇城元選手だった。
パラ・パワーリフティングのデビュー戦。2015年1月11日 第15回全日本障害者パワーリフティング選手権大会。
大会の前日、スカウトしてくれた選手の一人、三浦選手から突然のTEL。「明日の大会で記録出したら日本新記録だぜ!」
結果は 59Kg級 ジュニアの部、優勝(シニアの部3位) 記録70Kg 特別試技も成功し、ジュニア日本新75Kg樹立。
ぼくは「波を起こされたらそれに乗っちゃうタイプ。」
だから、「日本新記録だぜ!」という言葉で「よっしゃやるか!と調子に乗った」
<決断>
テニスのトレーニングの一環としてバーベルに親しんでいたが、パラ・パワーリフティング歴3年となった2017年(大学2年)
テニスではなく、この競技で東京2020を目指そうと決断。この決断が素晴らしかった。特に、この年の12月は濃い。
2017年12月2日~8日 メキシコ世界ジュニア選手権大会 59Kg級 3位。記録:102Kg(ジュニア日本新)
初めて、ベスト記録が100Kgを超えた!
その足で直接ドバイへ移動。そして出場したユース大会。
2017年12月10日 DUBAI 2017 Asian youth para games 59Kg級 2位。記録:109Kg
世界選手権後1週間でさらに自己新記録更新。(ジュニア日本新も更新)
さらに、またその1週間後
2017年12月17日 全日本選手権 105Kgという好記録を出した。(男子59Kg級 ジュニアの部優勝)
2017年 第18回全日本選手権にて(撮影:西岡浩記)
その後、メキメキと力をつけ、ついに今年、シニアの日本新記録を樹立した。
2020年2月 第20回全日本選手権 男子65Kg級 日本新記録:141Kg、特別試技にて樹立
この先の目標は?
赤板3枚付けたい=(あかばん=1枚25Kgの重り)を両端に3枚ずつ=170Kg
今は青板3枚のちから=(あおばん=1枚20Kgの重り)を両端に3枚ずつ140Kg、
で、ゆくゆくは黒板(50Kg)をつけたい。日本で一番重いものを挙げる選手になりたい。
◇試合にまつわる話
「試合で爆発させる」
車イステニス選手時代からの経験で、試合が始まる前に気持ちを高ぶらせない、なるべく静かにいるように心がけている。
普段のトレーニングでも気を付けている部分だそうで、「まじめになりすぎないようにしている、本番のために本気を取っておく」とのこと。
ここぞというときのための「体力温存」方式。どこで、その本気が爆発するか?
第1試技が始まる時、名前呼ばれて出るときに、声を上げて切り替える、その時にアドレナリンが出るのを感じる。
頭から内部に向けて何かが出るのを感じる。ここから先の気迫に満ちた姿が、普段私たちが舞台上で目撃している奥山選手だ。
「注目されるのは好き、注目されると燃える」
試合中はテンションとアドレナリンがMAXとなるが、客観的であること、自分を失わないようにすることは気を付けている。
客観的な部分を残しているので客席の様子はよくわかる。それだけに、気合の雄たけびを発したことに対して、
客席からのレスポンスがあるとすごくうれしいし、気合が入る。掛け声と応援のやり取りが生まれて会場が盛り上がるのが快感だそうだ。
「この競技は自分との闘い。」
試合は、自分がこれまでやってきたことを出すもの。駆け引きでの勝負というよりは、練習でやってきたことを、
きちんと記録として出せることを、より重要視している。今自分ができる最大値を出すことがベストと考え、試合に挑んでいる。
大会では、奥山選手にどんどん声をかけて、声援をお願いします!
撮影:西岡浩記