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【広報インターン】2017ジャパンカップ 激闘を振り返る

2017.08.07
コラム



7月16日、パラ・パワーリフティング2017ジャパンカップが北九州芸術劇場(福岡県北九州市)で行われた。競技会初出場者から日本記録保持者まで揃い、タイからも3選手が参加。男子の部では6選手(うち2選手はジュニア)が日本新記録を樹立した。


試合の解説は日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長が自ら務めた。「上げる際にバーが傾いたり、胸でバウンドしたりしてはいけません」といった基本ルールから選手の情報まで、初めてパラ・パワーリフティングを見た人でも楽しめる大会となった。

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女子の部 最優秀選手は小林浩美選手
女子の部では、45kg級に2014年のアジアパラリンピック同階級銅メダリストの小林浩美選手が出場。「調子が低迷している」と自身が話すように自己ベストの71kgには及ばなかったが、60kgを上げて優勝し、女子最優秀選手に選ばれた。


50kg級にはマクドナルド山本恵理選手が出場。第1試技の50kgは危なげなく成功させた。しかし第2試技の53kgは失敗。コーチである、国際パラリンピック委員会(IPC)の世界パラ・パワーリフティング技術委員長ジョン・エイモス氏から「大丈夫。ゆっくり準備しなさい」と声をかけられ、「1インチでも上げよう」という気持ちで挑んだ第3試技。こちらも残念ながら失敗となり、自己ベスト更新とはならなかったが、「(昨年12月の)全日本よりもいい形で50kgを上げられた。気持ちよく上げられたのは収穫」と手ごたえはあったようだ。


73kg級にはパラ陸上のF55やり投げと砲丸投げで日本記録を持つ坂元智香選手が初出場。55kgという記録に「練習では62kgくらい上げていたので手ごたえはない。場の空気にのまれてしまった」と話した。同階級にはタイからアラワン・ブッポ選手が出場し、100kgを上げる姿には会場から歓声が上がった。


リオパラリンピアン三浦選手、西崎選手が出場
男子の部では、49kg級に三浦浩選手、54kg級に西崎哲男選手と2名のリオパラリンピアンが出場した。三浦選手は世界ランク8位浮上(大会時点)をかけた122kgを完璧に上げ、127kgまで記録を伸ばして優勝。王者の貫禄を見せた。


西崎選手は第2試技で失敗した135kgを第3試技で成功させ、優勝した。第2試技を落としたことについて西崎選手は「息を吐きながら上げるように指導されているのにそれが抜けてしまった。呼吸の大切さを再認識した」と話す。4月からエイモス氏の指導を受け、練習日数を週4、5回から週3回に減らして質を高めてきたという西崎選手。怪我をしないことを前提としたメニューのおかげで「体の調子はすごく良い」という。今後の大会に向けては、「いまのままでは出場も危うい。大会ごとにきちんと上げて出場を確実にしたい」と意気込んだ。


新人選手の活躍も
65kg級は日本記録保持者の城隆志選手が132kgを上げて優勝。2位の田中翔悟選手は昨年12月の全日本選手権大会(東京都世田谷区)が初出場、3位の篠田雅士選手は競技を始めて約2か月と、新人選手の成長も著しい。篠田選手は第1試技、第2試技を落として後がない状態だったが、第3試技では両試技を上回る120kgを上げ、会場は拍手に包まれた。

 

72kg級 優勝争いは先の見えない展開に
72kg級は日本記録保持者の佐野義貴選手と80kg級から階級を下げた斉藤伸弘選手が優勝を争う展開となった。両選手が140kgを上げた状態で迎えた第3試技。同じ重量で終われば、より体重の軽い佐野選手の優勝が確定する。追い込まれた斉藤選手だったが結果は惜しくも失敗。佐野選手が72kg級日本王者を防衛した。


試合後、「斉藤選手が72kg級に来るとは聞いていたが今回からとは知らずびっくり」と話す佐野選手だったが、「周りは気にしないタイプなので145kgを上げることに集中した」という。大会数週間前に体調を崩して体重が68kgまで落ちるという事態に見舞われたが、「それを言い訳にはできない」と表情は厳しい。東京パラリンピックにつながる大会が多く控える今後に向け、「若手選手も斉藤選手も引き離して東京では代表入りしたい」と意気込みを語った。


日本記録更新続々
59kg級では戸田雄也選手が120kgを上げ、自身の日本記録を10kgも更新した。戸田選手も4月からエイモス氏の指導を受けている選手の一人。「健常者の真似をしていた」というフォームを改善し、トレーニングで体のベースアップを図ったという。「確実に上げたかった115kgが上がり、目標の120kgも上げられてよかった」と試合を振り返った。


80kg級では宇城元選手が186.5kgを上げて自身の日本記録を更新。全日本選手権大会では落とした第1試技を完璧に上げ、全ての試技を成功させた。昨年手術した左ひじについて万全ではないというが、今後の活躍も楽しみだ。


97kg級では馬島誠選手が146kg、107kg級では中辻克仁選手が197kgを上げて日本記録を更新した。中辻選手は第4試技で日本人初の200kgに挑戦。成功はしなかったものの、会場は熱気に包まれた。


男子ジュニアでは59kg級で奥山一輝選手、107kg超で松崎泰治選手がそれぞれ日本新記録を樹立した。ジュニア選手の次の大会はジュニア世界選手権で、9月にメキシコで行われる。


9月29日に始まるメキシコ世界選手権から、東京パラリンピック出場者の指名の基準となるランキングのポイント加算が始まる。ジュニア選手権も含めて、選手の活躍を期待したい。


 広報インターン 【一橋新聞部・川平朋花】